子どもの成長は楽しみなものですね。
ただ成長がゆっくりであったり、ほかの子とくらべてしまったりなど、ママにとっては心配や不安が尽きないものです。
そのなかで「歩行」は、目で見てはっきりとわかる大きな成長のひとつであり、その分ほかの子との差がつきやすいものです。
早ければ1歳で最初の一歩をふみ出す子がいれば、1歳過ぎたのに歩かない…まだまだその傾向が見えない子もいます。
今回はママにとって心配のタネのひとつ、1歳児と歩行について勉強していきたいと思います。
1歳児、歩行ついてみんなが不安なこと
1歳児の歩行について、世の中のママさんはどのような不安を抱えているのでしょうか。
いくつか声をあげてみたいと思います。
- 1歳6ヵ月になるのに、まだ歩かないんです。伝い歩きや高ばいはするのですが。なにかの病気でしょうか?
- 1歳3ヶ月の男の子の母です。息子は伝い歩きや高ばいはするのに、手を引いてみても一向にひとりで歩こうとしません。首すわりや寝返り、ハイハイも遅めでした。これからちゃんと歩けるようになるのか心配です。
- 1歳半の娘がまだ歩きません。伝い歩きやハイハイはしますが、ひとりでのタッチはできません。早産だったので、こんなもんかなと思っていましたが、さすがに心配になってきました。
発言小町より
うちの場合はハイハイの期間が短く、すぐに立ち上がろうとするので
「こんなに早く歩いて大丈夫か!?もっとハイハイの期間があったほうがいいんじゃないのか!?」
と逆に不安になったものです。
今では家の端から端まで、毎日走り回っていますけど(;^ω^)
親って早くても遅くても、どちらにしろ心配してしまうものなんですね。
歩くまで~おおよその目安~
では標準的には、どのくらいから歩きはじめるのでしょうか。
歩くまでの過程とともに、だいたいの目安を確認してみましょう。
ズリばい生後7か月ごろには、ほしいもののところまでズリばいを始めるようになります。
ズリばいとは、腹ばいで床にお腹をつけた姿勢のまま、手を伸ばして前に進む様子のこと。ほふく前進のような形です。
ハイハイ生後8か月ごろには、右手と左足を前にだし、次に左手と右足を前に出すという左右バラバラの動きができるようになります。これがハイハイです。
高ばい・つかまり立ち生後9~10か月ごろには、高ばい(地面にヒザをつけず、手と足の裏だけを地面につける)やつかまり立ちをする子がでてきます。
伝い歩き生後11か月になり、下半身の筋肉や足の力がついてくると、つかまり立ちに慣れ、伝い歩きをする子がでてきます。
はじめの一歩1歳ごろになると、つかまらずにタッチができるよになります。
また早ければ「はじめの一歩」をふみ出す子もいます。
ひとり歩き1歳3ヶ月ごろになると、多くの子がひとりで歩くようになります。
すでに安定して歩いていた子は小走りや手にものをもって歩く子もいます。
歩くための5つの条件
子どもが「はじめの一歩」をふみ出すために必要な5つの条件についてみていきましょう。
②体のバランスをとったり、体の動きを調整する小脳が発達している
③ころんだ時に顔や頭を打たないように、手を出すなどの危険に対する咄嗟(とっさ)の反応ができる
④歩きたい・あれがほしいなどの欲求がある
⑤多少失敗しても大丈夫という安心感
まず歩くためには、基本的な体がつくられていることが前提です。
また危険に対して咄嗟(とっさ)に反応できる反射神経も必要です。
そのうえで「歩きたい!あれが見たい!ママのところに行きたい!」というような、欲求や興味を持っていることが必要です。
こけたり、ぶつかったりして泣いてしまった時に、心配して手当てをしてくれる存在があることは「何があっても大丈夫」という安心が持て、それが一歩につながります。
成長には個人差が大きい
標準的な成長の過程について、みてきました。
ただ当然のことながら、みんながこの通り成長するということはありません。
行きつ戻りつしながら、その子のペースで成長していきます。
成長のしかたにはそれぞれ個人差があります。
早くに歩きはじめる子もいれば、しっかり歩ける準備ができてから歩きだす慎重派もいます。
他の子とくらべるのではなく、その子のペースで成長していれば、目安通りに歩かなくても心配することはありません。
冒頭のママさんたちの声のように「伝い歩きはできているんだけど」「高ばいはしている」など、〇〇はできているという前提があれば大丈夫。
その子はゆっくりなだけで、歩く前兆がでていれば問題ありません。
さらにいうと1歳6か月ごろまでに自分でタッチができ、1・2歩でも歩ければ大丈夫です。
それまではゆっくり・焦らず・他人とくらべず・その子のペースで見守っていきましょう。
知られてないハイハイの重要性と効果
最近では歩く前段階であるハイハイの重要性が注目されています。
近年は家の狭さや歩行のための補助具の普及によって、ハイハイをあまりせずに歩き出す子が増えています。
ただハイハイをあまりしないことによる弊害もみえてきました。
ここではハイハイの効果について確認していきます。
ハイハイは全身の筋肉を鍛える
赤ちゃんは体の大きさの割に、頭が大きく重くなっています。
その頭をグイっと持ち上げてキープするのはとても大変で、首・肩・背筋などに力を入れなければできません。
また四つん這いの姿勢も背筋・腹筋・お尻の筋肉など、体の中心となる筋肉をフル活用しています。
さらに移動するためには手や足の動きもかかせません。
ハイハイは体幹トレーニング
プロサッカー選手が取り入れていることで有名になった体幹トレーニング。
赤ちゃんのハイハイも、体幹トレーニングのひとつといわれています。
体幹とは体の中心部分、大きい意味では胴体のことをいいます。
また別の言い方では胴体の深い部分の筋肉のことをさします。
これらの筋肉は呼吸や姿勢維持・体を動かしたり、バランスをとるなどの重要な役割を担っています。
ハイハイは、人間にとって重要な体の基礎・基盤つくりになります。
ハイハイはバランス感覚・反射神経を養う
ハイハイは実際やってみるとわかりますが、一瞬ですが片手と片ひざだけが床についている状態になります。
しかも反対の手とひざ(左手と右ひざ・右手と左ひざ)なので、とてもバランスが悪いです。
また高ばいに関していうと、足は全体ではなく指のあたりだけで支えていますよね。
つまりハイハイはバランスを上手に保つ力がないとできないし、次の手をすぐ出せるような咄嗟(とっさ)の反射神経がないと難しいんですね。
ハイハイは行動範囲や意欲・興味の拡がり
ハイハイは人間がする初めての移動行動といわれています。
今までは同じ場所で手足をジタバタするだけだった赤ちゃんが、自分で行きたいところに行けるということは、たいへん大きな一歩です。
自分の興味があるところに行く。
そして興味のあるものを触る、ふと横をみるとまた新しく知らないものを発見する。
さらに移動して触る・匂いをかぐ・投げてみるなどなど。
ひとは移動によって自分の興味・関心を満たし、さらに新たな好奇心を芽生えさせ、知識と経験を増やしていくのです。
ハイハイは脳の発達を促す
手足をしっかり動かすことは、脳にも大変いい刺激になります。
ハイハイはただ手や足をついているだけに見えますが、実は指先や足先をしっかり踏ん張って動いています。
この手・足先の踏ん張りは、今後のはさみや箸・鉛筆持ちなど指先の細かい動きにつながり、さらに脳の発達にもつながっていきます。
また自分自身で興味のあるものを探して見つけ、移動して手に取り五感で感じるなどした刺激は、今までのように待っているだけの刺激よりも脳への刺激としては各段に大きくなります。
ハイハイは協調運動の発達を促す
協調運動とは、体が行うバラバラの動きをひとつにまとめる運動のことをいいます。
代表的なものとして、ラジオ体操は手と足を別々に動かしますし、なわとびは縄を回しながらタイミングよく飛ぶというようなバラバラの行動をうまくまとめて行っています。
エレクトーンやドラムなどは手と足、さらには左右の動きがとにかくバラバラですので、とても高度な協調運動といえます。
ハイハイも反対側の手と足を交互に動かし、首を動かし、体幹で体を支えるなどの協調運動を行います。
この協調運動がうまくできないと、運動が苦手だったり、よく転ぶ・手先が不器用などの困難さがでてきます。
ハイハイを促すには?
ハイハイや赤ちゃんの姿勢は、ダイエットやプロスポーツ選手のトレーニングにも使われているくらいですから、歩くために必要な大事な準備運動だとわかりますね。
ただ子どもが立ち上がったり、歩きたがるのを制してハイハイをさせることはできませんし、子どもがやりたがるのを止める必要はありません。
まずはハイハイがたくさんできるような環境つくりをして、ハイハイをしたくなるような遊びの工夫をしてみるのがいいと思います。
具体的には。。。
- なるべく広いスペースを作る
- 家の中で広いスペースがないときは、子どもの広場など外の施設を利用してみる
- 危険がないように机の角などを保護する
- 少し遠くから赤ちゃんを呼んでみる・少し遠くに好きなおもちゃを置く
- 親も一緒にハイハイする・ハイハイする姿を見せる
なにより赤ちゃんの「あれがほしい!」「ママに近づきたい!」という意欲・興味を刺激することが大切です。
また「うちはすでに歩きだしてしまってもう遅いわ」と諦めないでください。
歩きだしてからも遊びの一環として、一緒にハイハイをしてみてください。
子どもは楽しみながら同時に体を動かせるので、とてもいい運動になりますよ。
ハイハイトレーニングの動画です。ご参考に!
世界最速ハイハイの動画です。面白いですよ(笑)
ひとり歩きが始まったら注意すること
ヨチヨチながらも、ひとりで歩けるようになると行動範囲が格段に拡がります。
1歳児は統計的に一生のなかで一番、事故が多い年齢と言われています。
安全に楽しく歩きを促すことができるように、一度家の環境をチェックしてみましょう。
- テーブルの角・柱・でっぱりにぶつかってケガをしないようにクッションなどで保護を
- 玄関や階段からの転落に注意
- お風呂にはお湯をためておかないように、また浴室には入れないように
- 窓やベランダの近くに上ることができる棚や踏み台などを置かない
- 窓にはできれば二重ロックが安心
- 転落の危険性がある場所には入れないように柵などを設置しよう
- 危険なものは手の届くところに置かないように
- 扉や戸棚・引き戸などは開けられないようにガードをつけよう
- キッチン・洗面台・お風呂場には危険(包丁・カミソリ・化粧品・洗剤・コンロなど)がいっぱい、意識して片づけるように
- 外遊びは交通事故に注意!小さいころからしっかり交通ルールを教えよう
一度子どもの目線の高さまで、体をかがめてみてください。
さらにはママさん自身が、ハイハイで動き回ってみるのもいいです。
すると。。。
「こんなところにこんなものが落ちていた!」
「ちょうど目の高さに突き出たものがあって危険!」など気づくことがあります。
私のヒヤリハット体験
私の実体験をひとつお伝えします。
娘が歩きはじめてしばらくのころ、実家に帰省していたときのこと。
娘はいつもと違う場所に興奮ぎみで、あちこち歩き回って目に付くものを手にとって遊んでいました。
それを横目に私はキッチンで食事の準備をしていました。
食卓までお皿をはこんでいると「あら?娘がいない」。
キッチンをふとのぞくと、そこには両手に包丁の柄(え)をもち、得意げに微笑む娘が!!!
しかも柄を握っているのではなく、親指・人差し指・中指の3本指でつまんで持っている様子。
イメージしやすいように絵をかいてみました。
絵心がなくサイズ感がおかしくて申し訳ありません。ちなみに実際の娘は服を着ています(笑)
心では「ギャー!」と叫んでいましたが、娘を驚かせて包丁を落とされでもしたらと思い、落ち着いてそっと包丁をとりました。
いま思い出しても本当に心臓がバクバクします。
もし落としていたら、もし振り回しでもしていたら。。何かあったら後悔してもしきれないと思います。
実家は子どもがいないので開き戸のガードはしていませんでしたし、その他の危険予防対策もしていませんでした。
帰省中の事故は、実際には多いんですね。
自分の家は毎日暮らす家ですから、危険予防対策は当然していますが、実家は盲点になりやすいです。
自分で移動をしはじめた1歳児などは危険予知能力や自己防衛力が十分ではありません。
いま自分が手にしているものが何かもまだわかっていない時期ですから、その点を忘れず危険への対策はしっかりしていきたいですね。
歩きを促すには?
ほかの子とくらべて歩くのが遅いからといって、焦る必要はありません。
その子のペースで歩みを進めていれば問題はありません。
ただそうはいっても親としては心配だし、なにかできることがあるならやりたいと思うものですね。
では子どもの歩きを促すポイントについて確認してみましょう。
- 歩行の前段階(ハイハイ・ズリばい・つたい歩きなど)をどんどんさせる
- 興味・関心をひくものを置いてみたり、ママパパが名前をよぶなどして行きたくなるような工夫を
- 広いスペースを確保する
- こけても痛くない環境つくりを
- ①傾きのない水平な場所②固くしっかりした地面や床③平らでデコボコのない場所④一歩をふみ出しても障害のない自由空間でまず練習を
- 平坦な場所に慣れたらだんだんと難しい場所(少しの段差・芝生・坂道・階段など)にトライ
- 歩行器のさせすぎに注意
- 足や足指をしっかり機能させるためには家のなかでは裸足がオススメ
- 安全なところであれば多少はこけたり尻もちもよい経験に
- 手をだしすぎていないか確認しよう
- 無理やり歩行の練習をさせない、楽しくやろう!
歩行器は使う?
歩行器に関してはさまざまな意見がありますが、無理に使う必要はありません。
歩行器は腰回りが強制的に支えられることによって、普通の歩行というより足でけって移動するというような形になります。
そのため歩行の練習にはならず、歩行に必要な体の機能を発達させるかというとあまり役には立ちません。
さらにはさきほど出てきた発達に関して重要なハイハイをしなくなるため、むしろ発達に遅れが生じるという意見もあります。
また歩行器ごと倒れてケガをするリスクもあるため、歩行を促す目的の場合や買うかどうか迷っている場合は必要ないかなという印象です。
手をだしすぎていませんか?
まだ歩かないと悩んでいるママさんのなかで、手をだしすぎているというケースもあります。
子どもがほしいものがわかるのはいいのですが「これが欲しいんでしょ」とすぐに渡してしまう。
これでは子どもの「あれがほしいから頑張って行ってみよう」という気持ちは、いつまでも芽生えないままです。
さきほどの歩くための5つの条件のなかに「欲求があること」という項目がありましたね。
ママは多少鈍感なくらいでいいです。
そうすることで、子どもの「いってみたい!やってみたい!」という欲求や関心をどんどん育ててあげてほしいと思います。
心配なときは。。。
ただママの心配が実際にあたっている場合もあります。
いつも身近にいるママだからこそ「歩くのに何か問題がありそう」など、すぐに気づく異変もあると思います。
そのときはぜひ早めにかかりつけ医や健診で相談をしてください。
早めの対応で適切な治療やリハビリができます。悩んだら早めに専門家に相談するのが一番です。
まとめ
さて今回は1歳児と歩行についてみてきました。
私の友達で「1歳3ヶ月でなかなか歩かない、未熟児で生まれたし遅いのかな」と心配しているママさんがいました。
でもしばらくして会うと驚いたんですが、すごくしっかり歩いてあちこち動き回っていたんですね。
ママさんは「追いかけるのが大変!」と言いつつも、嬉しそうでした。
その子はまわりの子の動きをとてもよく見ていて、イメージトレーニングをしていたんじゃないかと思うんです。
そして準備ができたから歩きだした。
今までのイメージができているから、歩きだしたら早いこと!
子どもの成長は型通りにはいきません。
育児も同じ。それぞれのペースで一歩一歩、進んでいきましょう。