高齢出産での育児と認知症の親の介護。ダブルケアの注意点とは?

妊娠初期

最近では子育てと介護が同時に発生する事を“ダブルケア”と呼ぶそうです。

「ダブルケア」という言葉は横浜国立大学の相馬直子准教授と英国・ブリストル大学の山下順子講師が共同研究を進める中で生まれた造語です。

40歳で出産、久々に里帰りした私は思いもよらぬ問題に直面しました。

両親とも急に衰え『認知的な問題を抱え始めた』のです。

私も母も高齢出産。ならば当然ダブルケアのリスクは高まります。

実家は既に『頼れる存在』ではなかったのです。

厳しい里帰りの中、どのような対応をしたのか書き進めたいと思います。

【介護が必要だと感じた時には】

まずは、近隣の包括センターへ

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自治体により名称が違います(高齢者支援センターなど)。

事前に電話で連絡をとり相談します。

産後で身動きしにくい旨を伝えましょう。

介護認定調査ケアマネージャーさんについて、またその申請窓口など戴いたアドバイスを元に、手続きを始めます。

各自治体のお役所に手続き依頼

介護認定調査の依頼

障害者手帳の交付、それに絡む諸手続き

など手続きを進めました。

例えば父の場合、腎不全で透析をしており障害者手帳や医療費免除の対象になっていましたが、知らずに過ごしていました。

このような事を病院で教えては貰えません。

手続きにあたっては、産後のため本庁に行けない事を伝えましょう。

私の場合、一度に申請出来るよう職員の方に自宅までお越しいただきました。

とりあえず「無理な事はムリ!」と言ってみて、融通を利かせてもらいましょう。

お役所の仕事は全て縦割りです。

例えば、障害者手帳の申請、それに伴う医療費減免申請、タクシーチケットの交付など全て別部門で行われています。

それをいかにワンストップで行えるかが、忙しい育児中には大きなポイントとなります。

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介護保険の恩恵をしっかり受ける事は大切です。

認定調査を拒む方がいらっしゃいます。母がそのパターンです。

健康調査という名目で認定調査をして貰うことができます。

事前に申し出をしておきましょう。

更に障害者手帳を取得した場合、その恩恵を説明して下さる方はいません。

簡単なリーフレットは戴けますが、基本的には“自分で探るしかない”のです。

手帳を交付していただき、助かる事はとても多いのです。

自治体にもよりますが、医療費の免除やゴミの無料化、下水道料金免除など、さらには携帯電話の割引サービスや銀行のマル優制度など色々あります。

しっかり情報を集める事を日頃から心がけていただきたいとお思います。

ケアマネージャーさんは頼れる存在です。

しかし、ケアマネージャーさんのスキルやお互いの相性というのも影響してきます。

そんな時の相談も地域の包括支援センターが受けて下さいます。

是非、ご活用下さい。

【コミュニケーションに困ったら】

認知症は年齢が75歳を超えると 急激に有病率が上がると言われています。

アジア生命保険振興センターの調べによれば、認知症の割合は

  • ‹6569歳で1.5% 
  • 7074歳で3.6% 
  • 7579歳で7.1% 
  • 8084歳で14.6% 
  • 85歳以上27.3%

両親の年齢で言えば、7人に1人は認知症なのです。

子育てを一緒に取り組もうとした時、母の異常に気づきました。

母が物忘れするのは、疲れているせいかもと思っていました。

しかし、お互いのコミュニケーションが次第に取れなくなり苦しむ事に。

生活を共にしていく中で『おかしなことが起こっている』という自覚がお互いに芽生えました。

母は『忘れてしまう自分』が受け入れられずショックを受け、怒りに震えカンシャクをおこしてみたり落ち込んでみたり…。

接し方が解らず辛い思いをしました。

自分が疲れ、両親に怒りをぶつけてしまう事も。

そんな中でも、産まれたばかりの子供は自由に泣いてケアを求めます。

お互い気持ちのやり場がないのです。

子供は成長していきますが、両親については老いる一方です。

そして、日々の生活で気付いた事がありました。

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全て忘れているのではないと言う事。

認知症になってしまった本人の自尊心を傷つけない事がとても大切なのです。

『共感すること』『肯定する(否定しない)事』『諦める事』

この3つが心の中で大きな柱となっています。

『起承転結』の『結』までくると『起』が解らなくなりますので、簡潔に話す事も大切です。

時には、一緒にとぼけて話を終わらせなければならない時もあります。

すると母の場合、安心感が持てる様子です。

父の場合は「俺を騙している」と怒ってしまうので適当な相づちも程々に。

両親が望んで『解らなくなってしまった』訳ではない、そう思うと寛容になれるものなのです。

その境地に至るまで相当時間がかかるものですが…。

ダブルケアの利点

頑固まっしぐらの両親ですが、孫のワガママには甘々です。

お子さんが自己主張出来るようになったなら、お願い事をお子さんから言ってもらうと効果テキメンです。

子供(我が家の場合、まるでひ孫?)の誕生は、ボンヤリし始めた両親にとって活力の源となりました。

一時、要介護4だった父が要支援2までに回復するという奇跡がおこりました。

自力で歩き、洋服の着脱が自分で出来るようになったのです。

老い行く祖父母を子供が労る姿を見て、介護が子供の心を育てるのではないかと感じるのです。

子供が祖父母を愛し、愛された記憶を大切にして欲しいと願っています。

【まとめ】

年代別にみると、ダブルケアの当事者になる方の割合は30代が他の世代に比べ高く、予備軍も含めると、27.1%4人に1人がダブルケアを経験すると推測されます。ソニー生命保険より)

今後ダブルケアは一層深刻な社会現象になると予想されます。

内閣府男女共同参画局の育児と介護のダブルケアの実態に関する調査報告書をご参照されると良いでしょう。

我が家の状況は稀な事ではないのです。

両親ともに認知の問題を抱えたならば、子供である私達がケアに関わり生活を整えねばなりません。

しかるべき場所へ届け出をして、ケアマネージャーさんと共に取り組んでいく事が大切です。

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介護と子育ての両立、残念ながらいつかは終わりが来てしまいます。

一番大切な事は、ケアする当人が壊れない事です。

私の場合は壊れてしまいました。

産後の心身は疲れています。

実家が頼れない時は里帰りではなく、産褥入院という選択肢もあります。

自分の闘病も加わった時、幸か不幸か主人の失業により負担は軽減されました。

しかし金銭的困難が加わり、いま家族の絆が試されています。

困難を乗り越えた先、いつか家族の在り様が良い方へ変わると信じて…。