妊娠というのは、いつでも喜ばしいことだとは限りません。中には望まぬ妊娠に悩む人もいると思います。そんな時、選択肢として現れるのが、おろすという方法かもしれません。
- 手術?薬?どのような処置をするの?
- 費用はいくらくらい必要なの?
- 妊娠周期は関係あるの?
など、身近な問題になって初めて調べるという人が多いのではないかと思います。
今回の妊娠は望まぬもの、継続させられないものとなってしまっても、もし次にきちんと妊娠を望みたいと思ったら、おろす方法や値段、リスクをきちんと知って、悔いのない対応をしたいですよね。
一緒に詳しく見ていきましょう。
まず知っておこう!中絶・おろすとは
正式には人工中絶といい、母体、あるいは周囲の家族の意思によって意図的に妊娠を中絶させることを指し、自然流産や自然死産を表す中絶とは区別されています。
日本では人工妊娠中絶が可能とされているのは、妊娠22週未満までと定められています。これは、赤ちゃんが母体外で生命を保持することができない時期が妊娠21週目までだと考えられているためです。
- 妊娠初期…妊娠12週未満
- 妊娠中期…妊娠12週~妊娠22週未満
- 妊娠後期…妊娠22週以降
と、妊娠は週数で初期・中期・後期と分けられており、妊娠22週未満ということは、遅くても妊娠中期までにおろす処置をしなければならないということ。
赤ちゃんはお腹の中で一日一日ものすごい勢いで成長をしています。わずか数日でも、ずれてしまえば人工妊娠中絶はできない状態になり得るのです。
人工妊娠中絶は母体保護法という法に基づき行われており、人工中絶を受ける場合、本人と配偶者の同意が必要であると、その法律で定められています。
中絶・おろした後の赤ちゃんはどうなるの?
妊娠12週未満の中絶胎児は医療廃棄物(感染症廃棄物)として廃棄されます。妊娠12週以降になると、死体として扱われるため、火葬や埋葬が必要になります。
では実際に人工妊娠中絶を受ける場合について、詳しく見ていきましょう。
おろす方法は時期によって変わる
先ほども述べたように、赤ちゃんの成長スピードは想像以上に早く、その成長の度合いによっておろす方法も変わってきます。
初期中絶(妊娠11週目程度まで)
この頃は妊娠3ヶ月の終わりとなり、胎児は内臓が全て形成され、脳も出生時と同じ構造までに発達しています。
しかし頭殿長(胎児の大きさ)は4~6㎝ほどなので、吸引法または掻爬法での処置が可能とされています。入院の必要もほとんどなく、費用も比較的安いので、この時期までに治療を受ける人が多いようです。
吸引法とは金属棒を子宮内に入れ、吸引をかけることで子宮内容物を吸い出す方法です。
掻爬法とは特殊なハサミ状器具を使用し、医師の手によって子宮内容物をかき出す方法です。
・この頃の胎児の様子
中期中絶(妊娠12~21週目程度まで)
この頃になると、胎児がある程度にまで成長しているので、吸引法や掻爬法では処置しきれないケースが多くなります。そのため、出産時と同じように陣痛を起こし、分娩という形に近づけないとおろすことはできません。
また、妊娠12週目以降は死亡届を提出し、胎児を火葬・埋葬する必要もあります。手術は大きくなり、入院も必要になってくるため、費用は初期の倍以上になることもあります。
・この頃の胎児の様子
後期中絶(妊娠22週目以降)
先ほども述べましたが、この時期になるとおろすことは法的に認められていません。つまり、おろすという選択肢はないということです。
母体を救出するためにやむを得ず胎児除去をする必要がある場合でも、胎児が生命を維持できる方法をとることが求められます。おろすかどうかの選択は、できるだけ早めに決定しなければなりません。
・この頃の胎児の様子
手術や投薬…中絶・おろすのにかかる値段
以上のように、おろす方法は妊娠の時期によって変わりますが、負担する費用もそれに合わせて変わります。
重要なことを以下にまとめます。
- 中絶・おろす際の処置は保険適用外である
- 病院によって値段に差がある
- 費用に含まれるのは、妊娠検査費・手術費・術後検査費
- 入院費や薬代は別途加算
~妊娠11週目まで 7~15万円
12週目以降 20~50万円
妊娠検査500~1000円程度
手術後検査3000~7000円程度
エコー2000円程度
中絶・おろす際の費用が支払えない
妊娠12週目以降になると、病院にもよりますが、かなりの費用が必要となります。支払いが困難なため医療機関での中絶を選択しないまま、生まれてきた赤ちゃんを放置し死亡させてしまった、という悲しい事例も少なくありません。
そのようなことにならないように、費用面についても知っておくべきことがあります。
保険適用となるケースがある
先ほど、中絶は保険対象外であるということを述べましたが、一部例外もあります。
- 医師が中絶をすすめた場合
- レイプなどによる妊娠で中絶を望む場合
例えば、赤ちゃんの健康状態が著しく悪い場合、このまま妊娠を継続すると母体の生命が脅かされるような場合など、何らかの理由で医師が中絶を勧めた場合には、保険が適用されます。
また、望まぬ妊娠の中でもレイプなど強制的に妊娠させられてしまった場合にも、保険が適用されます。レイプをされたという事実をもとに認定を受けなければなりませんが、処置に必要な費用は全て保険で賄うことができます。
手術以外に投薬という方法もある?
手術費や入院費が支払えないために、妊娠中絶薬を購入したいと考える方も増えてきているようです。
結論から言いますと、ミフェプリストンなどの中絶薬は使用すべきではありません!
日本では未承認の医薬品で、薬事法により販売が禁止されています。もしも使用したことが判明すると堕胎罪で罪を問われることになります。
中絶・おろすことで考えられるリスク
望まない妊娠でやむを得ず、おろすという選択をしてしまうこともあるでしょう。
でも、忘れてはいけないのがそれによるリスクの存在です。特に女性側は精神面や金銭面に加え、身体面においても多大なストレスがかかることを忘れないようにしましょう。
■身体的リスク
〈初期中絶に考えられるリスク〉
- 麻酔によるアレルギー
- 子宮内の妊娠組織の遺残
- 子宮内感染
- 子宮に穴が開く
〈中期中絶に考えられるリスク〉
- 子宮頸管裂傷
- 子宮破裂
- 多量出血
- 子宮内感染
■精神的リスク
- 罪悪感
- 不安
- フラッシュバック
おろすことで、長期的に心のケアが必要になることもあります。命の重みを感じることは大切ですが、自分を苦しめてしまわないようにすることが大切です。
中絶・おろすという決断に悩んでいるあなたへ
費用やリスク面、自分自身が置かれている状況についてどうしていいかわからない…と悩んでいるあなたへ、知っておいてほしい専門機関をお伝えします。
- 妊娠22週を過ぎてしまい、中絶はできない
- 経済的に出産しても育てきれない
- 中絶はしたくないけれど、育てていく自信はない
- 妊娠には気が付いているけれど、怖くて病院に行けていない
- 赤ちゃんポストってどうなの?
などの不安や疑問を持っている方は、1人で抱え込まずに専門機関に相談してみましょう。
行政機関
お住いの地域ごとに必ず市町村が運営する期間があり、相談窓口も設けられています。地域情報に詳しく、いろいろとサポートをしてくれますので、お近くの機関に問い合わせてみましょう。
- 児童相談所
- 子育て支援センター
里親制度
小さな命をこの世に送り出してあげたいけれど、育てていくには経済的・精神的に無理だという場合や、妊娠22週を越えてしまい中絶が不可能になってしまった場合には、里親制度も検討してみましょう。
大きな協会で運営しているところもあれば、NPOで活動しているところもあります。
赤ちゃんポスト
この名前を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。赤ちゃんポストの概要を簡単に説明すると
を目的として設置されたものです。
現在、日本で正式に赤ちゃんポストという機関を運営しているのは、熊本県にある慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」のみです。赤ちゃんを入れる窓口は専用の通路の先にあり、人目につかないようになっています。
こちらに預けられた赤ちゃんは、熊本市が
- 親の引き取りを待つ
- 里親を探す
- 児童養護施設へ
という順に養育方法を検討していきます。
命は救われますが、お子さんに精神的な問題が付きまとうのは必至です。利用を考えている方は、一度こちらの病院に相談してみることをおすすめします。キリスト教系の病院のため、命についてきちんと向き合い、相談に乗ってくれるはずですよ。
病院HP:https://jikei-hp.or.jp/cradle-of-the-stork1/
リスクや負担としっかり向き合って、後悔のない対処を
望まない妊娠であったり、健康上、経済上の困難など、おろす理由はさまざまです。
きっとこれを読むあなたは、今まさにおろそうかと悩んでいる、あるいはおろすことをすでに決断した状態かもしれません。一言でおろすと言っても、身体面や費用面でも負担は大きいもの。身体的・精神的リスクも伴います。
- おろす以外の方法(里親制度や養子縁組など)も選択肢に入れる
- 一人で悩んでしまうことのないように
身近な人・公的機関など、信頼できる人にしっかり相談をして、悔いのない選択肢を選んでくださいね。
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