子宮筋腫を伴う妊娠出産のリスクと胎児への影響とは?

妊娠初期

ライフスタイルの変化により増えつつある子宮筋腫。今や4人に1人は抱えると言われるほどポピュラーな疾患です。

月経過多や生理痛に悩まされるほか、不妊の問題を抱える事も。

そこで、子宮筋腫が与える妊娠や胎児への影響やリスクについて自身の体験をもとに書き進めたいと思います。

子宮筋腫と不妊の関係

子宮というのは筋肉の塊の様な臓器であり、そこに筋腫という固い良性のしこりが出来ている状態を子宮筋腫と呼びます。そして子宮筋腫には種類があり、

  • 漿膜下筋腫しょうまくかきんしゅ)子宮の外側にしこりが出来、外側へと成長するタイプ
  • 筋層内筋腫きんそうないきんしゅ)もっとも多くみられるタイプであり、子宮の筋層内にしこりが出来るタイプ。
  • 粘膜下筋腫ねんまくかきんしゅ)子宮の内側にしこりが出来、内側へと成長するタイプ。月経過多や不妊、流産の原因に影響しやすいとされているタイプ

に分かれます。

筋腫自体の大きさが小さいほど、不妊や流産のリスクも小さくなり、出産にいたる可能性が大きくなります。

しかし、ここでお話しするのは粘膜下筋腫の場合で、注意が必要となって来ます。

なぜなら子宮の内側に向かって筋腫が成長している状態ですので、子宮内膜が狭くなってしまうからです。また、たんこぶの様な“筋腫”により赤ちゃんの着床が妨げられてしまう為、不妊になりやすいと言われています。

妊娠にかかわる筋腫としては、大きさとしこりの場所が重要になってくるのです。

手術をして筋腫を切除すればリスクが軽減するのかと言うと、必ずしもそうではありません。手術により子宮が傷ついてしまいますから、術後3ヶ月から半年は妊娠を避けなければならないとも言われています。

また術後に筋腫が再発する事も視野に入れて治療や妊活をしなければなりません。

既に子宮筋腫がありながら妊娠を望まれる方は、手術をすべきか否かも含め、医師にしっかり相談確認する事をお勧めします。

また、妊娠を機に子宮筋腫を見つけた場合には、出産する病院を見直す必要があるかもしれません。

子宮筋腫合併妊娠の留意点

母体への影響

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粘膜下筋腫3~4㎝の大きさで自然妊娠した私の経過をご紹介していきます。

自治体の子宮がん検診を受けた時の事でした。筋腫の付け根に着床しているのが見つかり、妊娠が判明しました。

エコーを撮ると解りますが、胎児が着床すると丸い部屋が作られます。既にその部屋が筋腫に潰され狭い状態になっていました。その時点で、医師からハイリスク妊娠である事を告げられたのです。

胎児の成長と共に筋腫が成長してしまう事、流産の確率が高い事、腹痛を伴うようになる事を告げられました。

その際、血流を良くする漢方を処方されました。しかし、少なからず肝臓に影響があるという理由で、後に転院した先の医師の判断により服用を中止した経緯がありました。

漢方の使用は、医師によって判断が異なりますので、よく相談をされた方が良いでしょう。

実際、妊娠中筋腫は8㎝まで成長しました。お腹が変形して「ここに筋腫があるな」と見てとれるまでになり、長時間の立ち仕事などで腹痛に襲われるようにもなりました

医師が“カチカチ山”と表現したように、筋腫という固い組織が胎児の成長と共に引き延ばされ成長していく過程で痛みを生じるという訳です。

更に子宮内胎児発育遅延おこした為、出来るだけ安静にするよう指示されるようになりました。母体が活動してしまう事で、血流が胎児に届きにくくなるのを防ぐためです。出産まで安静に過ごし、胎児に血流(栄養)を注ぐ事に専念していました。

私の場合、10分以上の活動を控えるよう促されましたので、買い物を主人に頼まざるを得なくなってしまいました。

産まれる前にどこか旅行へ…そんな事は許されません。病院から離れた所へ行くことは出来なかったのです。

筋腫があっても普通に妊娠し、出産するケースもありますが、ハイリスクになってしまうと活動を制限され、普通に生活する事も叶わなくなるものなのです。

胎児への影響

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妊娠20週の頃でした。丁度つわりのピークが過ぎ、お腹の中では胎盤が出来上がる時期です。

それまで、胎児の発育に問題はないと言われて来ましたが「遅れがある」と医師から告げられるようになりました。

胎盤が子宮筋腫の上に出来上がってしまった事で、更にハイリスクとなってしまったのです。

筋腫は、胎児の成長と共に大きくなり、胎児の成長を妨げるものとなります。胎児と母体を繋ぐ胎盤や臍の緒と子宮との間に筋腫がある為、血流に問題をおこします。

出産をして解った事ですが、胎盤の血流が悪くなった結果、胎盤そのものが小さく形成されていましたし、臍の緒もしっかりと太くなれずにいました。血流悪化に伴って、胎児がお腹で大きくなれずにいる状態=子宮内胎児発育遅延です。

また、胎盤が剥がれる(常位胎盤早期剥離=出産前に子宮内で胎盤が子宮から剥がれてしまう症状)リスクが高くなっていました。私の場合は、胎盤が筋腫から剥がれやすくなっている状態でした。

この常位胎盤早期剥離は、母子共に生命のリスクを伴うものです。

重症例の母体死亡率は約12%で,周産期死亡率は3050%と高い

(日本産科婦人科学会より)

母体と胎児をつなぐものが剥がれ分かれてしまうのですから、とても危険であるのは言うまでもありません。

大事に大事を重ね、妊娠39週まで無事に過ごすことができた私でしたが、破水をしてしまった為、更にハイリスクとなってしまいました。

陣痛がおきる度に細い臍の緒が圧迫されてしまい、胎内で心拍が落ちてしまうという難産に見舞われました。一刻も早く出産しなければならず、帝王切開も視野に入れ、陣痛誘発剤を使用しながらの出産となりました。

陣痛の度に臍の緒が圧迫しない位置を探すため動き続けなければならず、破水後3日目にしてギリギリ普通分娩で出産をしました。お腹の中で大きくなれず1900gの低体重児で産まれ、低血糖にもなっていたためGCU (Growing Care Unit=回復治療室)に10日間入院する事になりました。子宮内環境が悪かった為に、子供が胎内で苦しんだと思うと、いたたまれない気持ちになります。

リスクに対応出来る病院選び

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ハイリスク妊娠と言われたら、まず出産する病院を再考する必要があるでしょう。

周産期母子医療センター=周産期(出産の前後の時期という意味)に係わる高度な医療を対象とした医療施設で、産科新生児科の両方が組み合わされた施設。(wikipediaより)

地域にある周産期母子医療センターとして位置づけられている病院が一番安心と言えるでしょう。

通常の産院などには無い、

  • MFICUMaternal-Fetal Intensive Care Unit=母体胎児集中治療室)
  • NICUNeonatal Intensive Care Unit=新生児集中治療室
  • GCU (Growing Care Unit=回復治療室)

が備わっています。

このような病院は沢山ある訳ではありませんので、とても混み合っているのが現状です(※地域により異なります)。

ハイリスクと解った時点で転院すべきか医師と相談→必要であれば医療連携という形が一番スムーズです。

私の場合は妊娠11週で医療連携をしてもらい転院しました。

妊娠20週で発育不全をおこしてしまった事を考えると、早いうちに医療連携をした医師の判断は正しかったと言えます。

低体重(2000g以下)などリスクを抱えて産まれる事が予想される場合、出産後速やかな対応が要求されます。

一刻も早く赤ちゃんを助けたいならば、NICUGCUがある病院の方が心強いと言えます。

子宮筋腫を出産時に切除出来る?

医師の見解により違いは有ると思われますが、私の場合は“出来ない”と判断されました。理由は母体に負担がかかるからです。

出産時には多量の出血を伴い大きな負担がかかります。筋腫を摘出する事で更に出血量が増える事を避ける為の判断です。

出産を終えて体調が安定した時、筋腫の大きさを経過観察して予後を相談する事になりました。

私の場合、産後筋腫は小さくなり切除する必要は無くなりました。帝王切開のついでに筋腫を切除してしまうという事例を聞いた事があります。これは、帝王切開の際、筋腫の位置や大きさの問題で傷の縫合の妨げになる時などに切除する場合があるとの事です。

ハイリスク出産をして…まとめ

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高齢で且つ子宮筋腫があることから“子供は出来にくい”といわれていた私でした。しかし、奇跡的に自然妊娠をしました。

筋腫があった為に、こんなにもハイリスクになるとは…妊娠するまで何も知識がありませんでした。

妊娠しにくい事は言われても、妊娠出来た時のリスクについて知らされませんでした。

もし知っていたならば、筋腫の治療について取り組み方が違っていたでしょう。

無事に産まれてくるまで奇跡の連続でした。

筋腫があってもリスクを伴わない場合もあります。セカンドオピニオンなども視野に入れて、しっかり診断していただく事が大切になります。

筋腫を抱えながら出産を望まれる皆様の無事を祈るばかりです。