妊娠中は、どんどん大きくなる子宮に膀胱が押され、頻尿になりがち。
さらに「排尿痛」を感じることはありませんか。
免疫力が落ちているこの時期は、さまざまな病気にかかりやすくなっています。放っておけば赤ちゃんにも影響を与えることになりかねません。
排尿時の痛みの原因と対処法をしっかりとチェックして、笑顔で出産の日を迎えましょう。
妊娠中の排尿痛の主な原因は?
妊娠中に排尿痛を感じた場合、まず考えられるのは膀胱炎とカンジダ膣炎です。それぞれの原因や赤ちゃんへの影響をみてみましょう。
原因ナンバーワンは膀胱炎
排尿痛で最も多いケースは膀胱炎です。
これは、尿道から侵入した細菌によって膀胱が炎症を起こすもの。
健康であれば身体の抵抗力により、細菌の増殖はおさえられます。
しかし、ストレスや疲労、睡眠不足、身体の冷えなどが原因で抵抗力が弱まると、膀胱炎になりやすいです。特に女性は尿道が短く、細菌が膀胱内に入りやすいので、感染しやすいといわれています。
妊娠した場合は、子宮が大きくなって膀胱が圧迫されるため、頻尿になりがち。排尿しても尿が膀胱に残りやすいため、入ってきた細菌がとどまってしまうのです。
おりものも増えて蒸れるため、細菌も増殖しやすい状態に。体調の変化などから抵抗力が弱まっているので、より膀胱炎にかかりやすくなります。
次のような症状がみられたら膀胱炎の疑いがあります。
- 排尿時、排尿後に痛みがある
- 尿回数が多い
- 残尿感がある
- 尿に血が混じったり、白く濁ったりする
放っておくと腎臓にも感染し、急性腎盂腎炎(じんうじんえん)を引き起こすこともあります。
この場合、上記のような症状に加えて、悪寒がしたり発熱したりすることも。腰痛や背中の痛みを感じる症状も多いのが特徴です。
カンジダの可能性も
カンジダ膣炎は、カンジダ菌によって膣が炎症をおこすもの。もともと身体に存在しているカンジダ菌ですが、なんらかの原因で異常繁殖すると発症します。
妊娠中はおりものが増えるので菌が増殖がしやすい状態。抵抗力も落ちているので炎症がおきやすくなります。
次のような症状がある場合は、カンジダ膣炎の可能性があります。
- 排尿痛
- おりものの量が増える
- カッテージチーズのようなおりものがでる
- 外陰部の腫れやかゆみがある
膀胱炎とカンジダ膣炎が赤ちゃんに与える影響は?
膀胱炎になっても、赤ちゃんへの影響はありません。
しかし放置していて腎盂腎炎になると、流産や早産の原因になることもあります。
カンジダ膣炎の場合も、基本的には赤ちゃんへの影響はありません。
ただし出産時に症状があると、産道を通った赤ちゃんが感染する可能性も。
妊娠中は免疫力が落ちています。どちらの場合もすぐに症状が悪化しかねません。発症がわかったら、早めに治療するようにしましょう。
膀胱炎とカンジダ膣炎の治療法
排尿痛が感じられたら、早目にかかりつけの産婦人科を受診しましょう。
膀胱炎の治療法
ほとんど場合、抗生物質を服用することになります。
症状によっては、漢方薬、塗薬をだされることも。いずれにしてもお腹に赤ちゃんがいても安心なものを処方してくれます。自己判断で途中でやめたりせずに、きちんと服用して完治するようにしましょう。
膀胱炎の市販薬も薬局で購入できますが、妊娠中は控えるようにと注意書きがあります。安易に使用せず、医師の診断を受けましょう。
日頃からちょっと意識して行動することで、膀胱炎は予防できます。
- 水分は十分に摂取する
- トイレを我慢せずこまめに行く
- 陰部を清潔に保つ
水をたくさん飲んで、トイレは我慢せずにしっかり尿をだすこと。そうすれば、膀胱のなかにたまった細菌が流されて、回復しやすくなります。
妊娠中の膀胱炎については、次の記事をぜひ参考にしてみて下さい。
カンジダ膣炎の治療法
症状が見られたら医師の指示のものと、しっかりと完治するまで治療をしましょう。
具体的には、抗真菌剤入りの膣錠の挿入、軟膏などによる治療が行われます。
同時に、通気性の良い下着を身に付けてムレを防ぎましょう。風呂で洗うときは石鹸を使わずにお湯でやさしくすすぎ、清潔を保つようにすること。
からだの抵抗力を落とさないためにも栄養バランスの良い食事を心がけましょう。睡眠不足や過労は出来るだけ避け、規則正しい生活を送ることも大切です。
妊娠後期の排尿痛は前駆陣痛かも?
妊娠後期には、さらに子宮が大きくなり膀胱を圧迫するようになります。
36週~40週頃の排尿痛は、膀胱炎やカンジダなどの可能性もありますが、前駆陣痛(ぜんくじんつう)の痛みが影響している事も。
お産がはじまる時の陣痛は「本陣痛」です。しかしその前に不規則に子宮が収縮し、お腹のハリが出るのが「前駆陣痛」。下腹部が痛んだり、排尿痛を感じることもあります。
おしるしが近づいてきたタイミングで、排尿痛があったというママも多いようです。お腹のハリが規則的になっている、性器出血や破水…という症状に気をつけるようにしましょう。
不安な場合には、すぐに病院に問い合わせることをおすすめします。
まさかの危険サインに注意!
膀胱炎、カンジダ膣炎の他に考えられる排尿痛の原因には、
- 子宮外妊娠
- 子宮頸管炎
などがあります。
可能性は低いとはいえ、重症化すると赤ちゃんに影響を与える可能性も出てきます。それぞれどのような病気なのか、みていきましょう。
子宮外妊娠
赤ちゃんがお腹の中で順調に育つためには、子宮体部内に着床する必要があります。
ところが、卵管や子宮頸管(しきゅうけいかん:図中の子宮頸部)など子宮ではないところに着床してしまうケースも。これを子宮外妊娠といいます。
排尿痛、頻尿の他にも下腹部痛、不正出血、吐き気、熱っぽさなどの症状がでます。
また、発見が遅れれば、それだけ胎嚢が育ってしまいます。卵管がその大きさに耐えられずに破裂してしまえば、大量出血の恐れも。
それを避けるには、早期発見が重要。胎嚢は妊娠5週目以降に確認できます。それ以前では診断が困難です。しかし、7週目以降になると胎嚢が大きくなって卵管が破裂する危険性があります。
つまり、5週から6週に発見し、適切な治療をすることが必要。日頃から生理のタイミングや生理痛の強さ、基礎体温などで体調をしっかりと管理するようにしましょう。
子宮頸管炎
膣から子宮につながる子宮頸管がさまざまな病原菌によって炎症を起こすのが子宮頸管炎です。症状には次のようなものがあります。
- 頻尿や排尿痛
- 性器のかゆみ
- 不正出血
- 下腹部痛、腰痛
妊娠しているときにかかると、早産や切迫早産の原因になる可能性も。出産時であれば、産道から赤ちゃんに感染して、肺炎や結膜炎を起こすこともあるのです。
放っておけばそれだけ、これらのリスクは高まります。気になる症状があれば、すぐに医師の診断をうけるようにしましょう。
おわりに
妊娠中に排尿痛を経験した人は意外に多くいます。
その原因はさまざま。しかしいずれの場合も早めに対処すれば、重症化を防ぐことができ、赤ちゃんに影響を与えることもありません。
身体の異常に気付いたら、恥ずかしがらずに早めに医師に相談するようにしましょう。
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