風邪に気を付けて過ごしていても、季節の変わり目には喉や咳に関するトラブルは起こりやすいもの。
咳が気になるけれど、妊娠中の風邪薬はちょっと…痰が絡んでいるけれど、なかなか出なくて不快…そんな思いをしている妊婦さんが処方されることの多い薬に麦門冬湯があります。
薬と聞くと抵抗がある人もいるかもしれませんね。
どんな薬なの?妊婦さんが飲んでも問題ないの?飲み方から漢方薬の基本まで、妊婦さんの参考になる情報をまとめてみました。
妊婦でも飲める咳に効く薬は?
咳が気になるけど、風邪とまでは言い切れない…そんな妊婦さんに処方されることが多いのが麦門冬湯という漢方薬です。実際に妊婦さんで麦門冬湯を処方された方の声を聞いてみましょう。
病院終わった―。妊婦だからということで麦門冬湯出してもらった。初期だしこれでうがいをしてね、とのこと。うがいでも効果があるみたいでよかった。
— つかさ@乾燥肌 (@g2OsfkEbA0iOHBJ) 2016年10月19日
麦門冬湯ほしい。
喉痛かったときに産婦人科から処方されて即効いたやーつ。
明日の妊婦健診で先生に相談してみよ。— まく (@tafi2446) 2016年5月15日
漢方薬なので、風邪薬と違って効き目は緩やかですが、正しく服用をすれば辛い咳や、のどの痛みも解消されます。もちろん妊婦さん以外でも咳に悩まされている方が処方される漢方薬なので、効果は期待できそうです。
@ponzu2_5ppp 麦門冬湯私も飲んでます( ´•ω•` )ちょっと必殺技みたいですよね、麦門冬湯(◜௰◝)!
妊婦じゃない私が腹筋しんどいのに、妊婦さんのぺにょくんも同じように咳してると思うと、しんどいだろうなーって心配です(;_;)ぺにょくんの咳 早く治りますように!— chon.☁︎ (@chon_05) 2015年12月17日
でも、咳が出るからと言って、必ずしも麦門冬湯が効くというわけではないのです。
妊婦だから市販の薬が飲めない。処方された漢方、麦門冬湯はこれっぽっちも効かなかった…つらひ。
— ハナちゃん (@QLq2XNYem6C7ggS) 2016年11月16日
病院で処方された薬が、どうして効かなかったのでしょうか。
妊婦さんの咳対策として処方されやすい麦門冬湯について、正しい飲み方や注意点を確認してみましょう。
麦門冬湯ってどんな薬?
麦門冬湯の効果
麦門冬湯とは、次のような症状の方に効果的な漢方薬です。
- 口内が乾燥し、咳が出るようになった
- 飛行機内やホテルなど乾燥しやすい所で寝たことで、口の中がカラカラになり咳が出やすい
- 痰が絡んでいるけれど、咳をしても痰は出ずに乾いた咳だけが出る
漢方で見る咳のタイプ
咳に対して処方されるものだと言いましたが、漢方医療では、咳と言っても一緒くたにせず、いくつかのタイプに分けています。それぞれのタイプごとに咳を引き起こす原因が異なるため、服用すべき漢方薬も異なるという点が重要です。以下をご覧ください。
タイプ | 症状 | 具体例 | 効果がある漢方薬 |
肺寒証 |
唾液が多く、口内の渇きはないが、咳が出る場合。 |
アレルギー性鼻炎、花粉症など | 小青竜湯 |
肺熱証 |
喉に炎症が生じていることで、咳が出る場合。 |
気管支炎喘息、気管支炎、乳幼児の風邪など | 麻杏甘石湯 |
肺燥証 |
鼻や喉が乾燥していることで、咳が出やすくなっている場合。 |
乾燥による咳や喉の痛み、ドライマウスなど | 麦門冬湯 |
麦門冬湯の成分
麦門冬湯に含まれる生薬は全部で6つ。生薬によって効能が違い、それぞれが上手く機能することで、咳症状を抑えます。
【麦門冬(バクモンドウ)】
滋養強壮、解熱、咳を抑え痰を除去するなどの効能があります。
【半夏(ハンゲ)】
胃が弱い人の咳を抑え、胃を強くする効能があります。
【人参(ニンジン)】
胃が弱り新陳代謝が悪くなっている場合、消化不良や食欲不振が見られる場合に効果があります。疲労回復、免疫機能を高めるなどの作用も期待されています。
【粳米(コウベイ)】
体内の余計な熱を取り除き、必要な部分を温めるという2つの作用を穏やかに行います。
【大棗(タイソウ)】
脾臓と胃の働きを良くし、生薬同士の薬理作用を緩和します。
【甘草(カンゾウ)】
鎮痛、解毒などの効能があり、胃痛や十二指腸潰瘍などにも効果があります。
麦門冬湯を飲む際の注意点
麦門冬湯に含まれる生薬の一つに甘草がありますが、この甘草を過剰に摂取してしまうと、アルドステロン症が起こる場合があります。
アルドステロン症とは、副腎皮質ステロイドホルモンのひとつ、アルドステロンの分泌が過剰になってしまうことで、高血圧症や多飲(水を飲みすぎてしまうこと)多尿を引き起こしたり、低カリウム血症を引き起こしたりする病気です。
ただし漢方薬が原因となるものは、アルドステロン症とまったく同じ症状を示すにもかかわらず、アルドステロンの分泌過剰が見られません。そのため偽性(ぎせい)アルドステロン症と呼ばれています。
甘草は多くの漢方薬に含まれており、加えてお菓子やしょうゆなどの甘味料としても用いられています。過剰摂取しやすい生薬ですので、麦門冬湯服用時には、他の漢方薬や食事内容にも少し注意しましょう。
知っておこう!漢方の豆知識・漢方とは
漢方とは
中国より伝わる中国伝統の医学の理論にしたがって、日本で独自に発展させたものが漢方と呼ばれる医療です。漢方医学には、漢方薬以外にも鍼(はり)や、灸(きゅう)も含まれます。漢方医学で使用する薬を漢方薬と呼びますが、その生成に当たって使用できるのは生薬と呼ばれる自然の資源のみです。草や木の根、木の皮、植物の種や実などを組み合わせて作られます。
これに対して、風邪をひいたり何か不調があったりする際に内科などで処方される薬は、西洋医学に基づいて作られており、合成医薬品と呼ばれる単一の成分で作られています。
漢方医学(東洋医学)と西洋医学の違いは
どちらが優れている、ということはなく、両者の違いは治療方法や病気の原因へのアプローチの仕方に違いがあります。
特徴 | 治療方法 | |
漢方医学 | 調和型 | 身体の機能の働きを良くすることで、体全体を整える。(病原体への直接の働きかけはない) |
西洋医学 | 攻撃型 | 患部に対してターゲットを絞り、集中的に治療をする。(病原体を直接攻撃し、除去していく) |
漢方薬の副作用
漢方薬による副作用とされるものには、次の2種類があります。
漢方医学には、身体の体質を表す「証」という概念があり、その証にしたがって薬を選びながら治療をしていきます。このとき、証に合わない治療や薬を投与してしまうことを「誤治」と呼びますが、そこで現れる症状が西洋医学でいう副作用である、という考え方があります。
正確には副作用というより、正しくない治療法だったという印であり、この誤治をもとに、投薬や治療方法を変えながらよりよい治療をしていくというのが、漢方医学での考え方のようです。
例えば、温めなければならない症状に対して冷やす性質の薬を投与してしまった場合、症状は改善されません。このように誤治による症状が見られた場合は、正しい治療(正治)に至るまで、患者さんの身体と向き合いながら治療をしていきます。
真の副作用として気をつけなければならないのが、アレルギー反応や生薬の薬理作用です。自然界の植物などで作られている薬なので、食べ物と同じようにアレルギー反応が起こることが考えられます。頻度は多くはありませんが、いくつか症例も確認されているので、以下のような症状には気をつけましょう。
【甘草(カンゾウ)】
偽アルドステロン症:顔や手のむくみ・尿量減少・体重増加・脱力感・筋力低下・筋肉痛・こむら返り・頭痛・のぼせ・肩こり・手足のしびれやこわばり・嘔気・嘔吐・食欲不振などの症状があらわれる。
【黄今(オウゴン)】
間質性肺炎:空咳・発熱・労作時の息切れなどの症状があらわれる。
【麻黄(マオウ)・附子(ブシ)】
心血管症状(動悸・不眠・神経症状):心臓がドキドキする・脈が早い・脈の乱れ・胸苦しい・悪心・嘔吐・不眠・イライラ・多量の発汗・舌のしびれなど。
【桂皮(ケイヒ)・当帰(トウキ)・黄今(オウゴン)】
薬疹(発疹・掻痒):発疹・皮膚発赤・掻痒・発熱など。
【地黄(ジオウ)】
胃腸障害:胃もたれ・胃痛・吐気・嘔吐・下痢・胸焼けなど。
妊婦さんにとって安全?
ウィルスを撃退するのではなく、身体の機能を改善することで根本から健康になっていこうというのが漢方薬の考えなので、妊婦さんにとっても刺激はそれほど強くないと言えます。実際に、漢方薬の服用による奇形児など胎児への影響は、これまで報告はありません。
妊婦さんに向けて作られるようになった代表的な漢方薬の一つに、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)があります。
当帰芍薬散は安産の妙薬として、妊娠中に服用すると妊娠腎(タンパク尿や浮腫)などの予防になると言われています。さらには服用を続けると分娩も軽くなると、妊娠前から継続して服用を進める病院もあります。
しかし、胎児に影響を及ぼしやすい妊娠初期(妊娠6~11週)はできるだけ服用を避けることをおすすめします。
★当帰芍薬散についてはこちらも参照して下さい。
妊婦さんの乾燥による咳には、麦門冬湯を
漢方薬と言っても、妊婦さんには全て問題がないということではないのですね。また、咳が出るからと言って、必ずしも麦門冬湯が効果的なわけでもありません。
まずは漢方薬の特性を理解し、その上で、どのような咳かを把握することが大切ですね。もしも乾燥によって喉が痛んでいたり、痰が絡んでいるのに空咳しか出ない、などの症状が見られたら、麦門冬湯を服用してみましょう。その際、自己判断で市販薬を買うのではなく、産院できちんと先生に相談してみて下さいね。
季節の変わり目は体調を崩しやすいです。特に秋から冬にかけては乾燥も大敵になりますね。ママと赤ちゃんが健康でいられるように、不調を感じたら早めに対処をしていきましょう!
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